2011年07月11日

福島第一の再爆発に備えよミチオ・カク物理学者

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コンピュータで徹底分析日本人は楽観しすぎている!


「福島第一の再爆発にそなえよ」


全米で最も著名な理論物理学者ニューヨーク市立大学ミチオ・カク教授が明かす



■これは時限爆弾です


「1906年4月、私の祖父はマグニチュード7,9のサンフランシスコ地震に遭遇しています。その時の44倍以上のエネルギーが、今回の東日本大震災では放出されました。


それほどの巨大地震だったわけですから、何カ月あとになっても大きな余震は起こりうる。マグニチュード9,1のスマトラ島沖地震では、3カ月後にマグニチュード8.6の余震が発生しています。


東日本大震災のマグニチュードは9.0でしたから、それに近い規模の巨大余震がいつ東北地方や福島第一原発を襲っても、決して不思議ではありません。
(注※スマトラ沖地震2004年9.1発生、その後、2005年8.6、 2007年8.5、2009年7.5、 2010年7.2、7.7と続いている)


日本の専門家の中には、「多くの死者と行方不明者を出した地震津波に比べて、原発事故の被害は少ない」という人がいるようでうすが、それは楽観しすぎです。


指先でビルの屋上の外壁にぶら下がり、『見てみろ!安定しているじゃないか!誰も死んでいないのだから、すべてOKだ』と言っているに等しい。本当はいつ再爆発してもおかしくない―――これが福島第一原発の実態なのです」


こう話すのは、ニューヨーク市立大学教授(理論物理学)で日系3世のミチオ・カク氏(64歳)である。


カク教授は、ハーバード大学を卒業後、カリフォルニア大学バークレーで博士号を取得。ニ
ューヨーク市立大学で30年にわたって教鞭を執る一方、物理学の普及活動にも熱心に取り組んでおり、『アインシュタインを超える』など多くの著書がある。


東日本大震災以降は、CNNやABCなどの報道番組に精力的に出演し、福島第一の今後などについて解説を行っている。その明晰な語り口は人気が高く、いまアメリカでもっとも著名な理論物理学者である。


カク教授は福島第一の現状をどう捉えているのか。ニューヨーク・セントラルパーク北にあるキャンパス内の研究所を訪ねた。


■「いいですか。忘れてはいけませんよ。いったん作業員全員が避難するようなことになれば、あとはもうフリーフォール(止めようのない急降下)です」最悪の事態はこれから起きるのかもしれない。



―――事故発生から4ヶ月近くが経過しました。当初のような大きな爆発が最近起きていませんが、福島第一はヤマを越えたのでしょうか。


カク:とんでもない。私は福島第一を、静かに時を刻む「時限爆弾」だと考えています。時限爆弾は一見安定していますが、爆発させないためには信管を抜かなくてはならない。


翻って福島第一は今、瀬戸際でぐらぐらしていて安定していない状態です。原子炉の水温は高いままで、来年にならないと冷温停止にはならないでしょう。


しかもちょっとした余震に見舞われて、原子炉を冷却するためのパイプが破裂し、原子炉の圧力容器や格納容器、使用済み核燃料プールの破壊が進めば、事故処理はまた振り出しに戻る。


現時点でさえ、作業員は原子炉建家の一部にしか入れず、一回の作業時間もたった数分から数十分に限られ、そのわずかな時間で年間許容限度の放射線を浴びることもある。いつ状態が悪化してもおかしくない福島第一は時限爆弾なのです。


■明日爆発してもおかしくない


―――福島第一にとって「最悪のシナリオ」とは、どのようなものを想定していますか。


カク:ご存知のように、炉心溶融が1〜3号機の3つの原子炉で起こりました。計測器は、これまでの予想を大幅に上回る深刻な事実を記録していますが、最悪のシナリオには未だ至っていません。


仮に巨大余震に襲われて敷地内のパイプやタンクが壊れたとしましょう。その時点で大量の高濃度汚染水が溢れ出し、放射能レベルは一気に上がる。


作業員はプラントから全員避難せざるを得ない。そこから原発事故は悪化の一途をたどるのです。


原子炉内には水が絶えず注入されていないと、すぐ干上がってしまう。しかし、原子炉の破損がよりいっそうひどくなれば、壊れたカップに水を注ぐようなもので、いくら注いでも水はさっと溢れ出す。


そうなると炉心溶融が再開し、再び爆発が起こる――これが、私の考えている最悪のシナリオなのです。


チェルノブイリでは水蒸気爆発と水素爆発がほとんど同時に起こりました。福島でも同じことが起こりえます。


すでに福島では数回の水素爆発がありましたが、大きな水蒸気爆発にはまだ至っていません。水蒸気爆発は原子炉全体を吹き飛ばす。


チェルノブイリでは炉心の約25%が気化して外界に打ち上げられました。たった25%が気化しただけで、今回の福島の事故の5倍もの放射性物質が放出されたわけですが、もし福島第一で水蒸気爆発が起きたら、その被害はチェルノブイリどころでは済みません。


なぜなら、水蒸気爆発したチェルノブイリ原発4号炉に装填されていたウラン燃料の総量は190トンとされていますが、福島原発1〜4号機は合計351トン。チェルノブイリの2倍近くもあるからです。(数千トンとする意見もある)


このシナリオは、もう1回巨大地震が福島第一を襲ったら、十分ありうる話です。再度の地震、パイプの破裂、作業品の避難、炉心に水を注ぐ要因の不在、炉心溶融、そして水蒸気爆発が炉心を吹き飛ばす、といったことは明日にでも起こりうるのです。


そうなれば、デッドゾーン(避難区域)の規模はすさまじくなる。チェルノブイリのデッドゾーンは19マイル(30q)。居住も農業など生産活動も一切禁止され、ゴーストタウンと化している。


放射能物質は50マイル(80q)ぐらいは容易に飛散する。東京は福島から150マイル(240q)離れていて安全圏だとしてもパニックが起こり、多くの人々が東京を脱出する。


私はこの「時限爆弾」が、ただちに爆発するとは言っていません。明日起こるかもしれないし、全く起こらないかもしれない。


しかし、こうした予測シナリオを描き、分析するための多くのコンピュータプログラムを開発し、それを元に行った数値シミュレーションこそ、われわれ理論物理学者が50年かけて研究してきたことなのです。


■日本政府は信用できない


―――日本政府は計54基の原発中、現在非稼働の35基を順次、再稼働させようとしています。本当に原発を運転再開させても大丈夫なのでしょうか。


カク:まず何よりも日本政府の威信は地に落ちました。多くの人々が日本政府や東京電力のもたらす情報を信用していません。


われわれアメリカの物理学者は、自分のコンピュータプログラムに事故のデータをインプットし、今回の事故の再現をしています。毎時間ごと、毎秒ごとの炉心損傷と放射性物質の放出量の分析をしている。


これが日本政府の発表する、聞く人を安心させるような情報とは一致しなかったのです。

彼らは当初、「炉心は何らかの損傷を受けている可能性がある」とし、損傷の程度も「ごく一部に過ぎない」と説明していました。


しかし、われわれはその時、すでに100%損傷している可能性があるほど、甚大な被害が出ていると予想していた。結局、東電が炉心溶融を認めたのは、事故がから2か月も経過した5月中旬のことでした。


また、われわれの計算では、放射性物質の放出量は公式発表よりずっと多かった。すると4月の段階で放射線放出量を37万テラベクレルに上方修正した。


幾度となく日本政府は安心させるようなことを言ってきましたが、コンピュータプログラムでチェックすると、彼らの言動は信用できないとわかるのです。


―――それでも、ギリギリのところで福島第一の状況悪化が踏みとどまったのは、何が理由だと思いますか。


カク:炉心溶融するほどの大事故を食い止めたのは、奇跡としか思えません。現場の吉田(昌郎)というリーダーが海水注入を続けたおかげです。中央からの命令に背いて海水バルブを開き続け、原子炉を冷やした。


彼こそ英雄です。窮地を救った。当時のあらゆる楽観的な見通しは、「原子炉を廃炉にせず、過去の投資を無駄にしたくない」という考えに発したもので、確かに海水を注入すれば炉は二度と使えなくなる。しかし、海水注入こそが唯一の正しい答えで、あとの選択肢はすべて間違いだったのです。


事実、われわれのコンピュータプログラムの事故再現によれば、炉心の損傷は激甚で、さらに圧力容器に穴が開いていることも警告していた。


それでもなお、日本政府が延々と言い続けたのは、「格納容器は破損していない」「スリーマイル島事故のような事態にはならない」ということでした。


それが現在では格納容器の損傷を認めている。この事態は重大です。水位が下がれば容器の底にある溶けたウラニウムが再び暴走し始め、大事故につながりかねない。

ですからわれわれは日本政府を信用していないのです。


―――日本政府が「夢の原子炉」として実現を目指している高速増殖炉については、どう考えていますか



カク:高速増殖炉は、燃やした以上に燃料(プルトニウム)を生み出すという、まるで手に触れた物すべてを黄金に変えるギリシャ神話の「ミダス王」のような代物です。


しかし、そもそもプルトニウムは非常に毒性が強い化学物質で、兵器への転用が可能です。ハイジャッカーやテロリストが手に入れたプルトニウムから核兵器を作りだすかもしれない。


そんな危険なプルトニウムを生み出す高速増殖炉を、アメリカ人はミダス王とは言わずに、「ファウストの契約」と呼んでいることを知っていますか。


ファウストは悪魔に魂を売って全能を手に入れた、ゲーテの作品の主人公です。つまり日本人は、無限にプルトニウムを生み出すことのできる高速増殖炉を手に入れるために、命を代価として差し出したのです。


今回、福島第一の敷地内からはプルトニウムが検出されましたが、日本列島に住む人々はプルトニウムにそれほどの価値があるのか、あらためて議論すべきではないでしょうか。


福島第一がこれほど甚大な被害をもたらしたうえ、巨大余震の可能性から逃れることもできないとすれば、日本人は原発からの段階的な撤退を真剣に考えた方がいいと思います。


とりわけ東海地震の予測震源域に建つ浜岡原発は、一刻も早く運転を永久停止するべきでしょう。


―――日本政府により「過小評価」は、パニックを抑制するためと見るひとがいます。


カク:原発はエネルギー効果がよく、CO2の排出量も少ないのは事実ですが、同時に大きな危険性も伴います。日本の人々にこれらすべてが十分説明されていたならば、広大な居住地を失い、何十万人という人々が退避しなければならないようなことはなかった。こんなに大きな衝撃も受けなかったでしょう。


■収束には50年、100年かかる


―――事ここに及んで、日本政府は真実を伝えていると考えていますか?


カク:未だに最小限の情報しか与えていません。たとえば、避難されている福島の人々はまだ、もと住んでいた家に戻れると考えている。


ある時点で、一部の人には自宅に戻れないと伝えるべきです。放射能によって汚染された表土を10cmほどプルドーザで削ったとしても、農地は助からない。チェルノブイリ同様のデッドゾーンとなるしかないのです。


日本政府は「いつかは正常に戻る」という根拠のない話をしていますが、問題は、福島に正常化などはないということです。本当のことを伝えなくてはいけない。さもなければ今後、現実を知らされたとき、人々はパニックに陥る。


放射能除去作業が始まった際、それは数十年かかる作業であると伝えられるべきでした。福島第一にプラントを納入している東芝は10年、日立は30年と見ているようですが、アメリカのエンジニアの中には50年から100年かかると見ている人々がいます。


思いだして下さい。チェルノブイリ事故は、25年経った今でも収束していないのですよ。炉心は地中にメルトダウンしており、原発自体を覆うための高さ100mの巨大ドームを建設していますが、まだ完成には至っていません。福島の事故もおそらく50年から100年は、収束しないでしょう。


―――暗澹たる話ですが、このように語る科学者が日本にはほとんどいません。


カク:日本人には何が起こったのか、そしてこれから何が起こるのかについて全面的に伝えられていません。われわれ物理学者は、過去に何度か同じような事例を見てきて、それをコンピュータ化しているから、福島第一の事故の規模はもっと大きいと知っています。


繰り返しますが、福島第一が安全であると主張することは、指先でビルの屋上の外壁にぶら下がり『見ろ、すべて安定している。誰も死んではいない。すべてOKだ』と言っているようなものです。

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―――CNN に出演した際、潜在的にはこの事故によって東北地方全域で人が住めなくなる可能性があると語っていました。


カク:その通りです。北日本の大部分です。福島第一が制御不能になれば、潜在的にはチェルノブイリより事故の規模が大きいのです。いいですか、忘れてはいけませんよ。


いったん作業員全員が避難するようなことになれば、あとはもうフリーフォール(止めようのない急降下)です。



ロボットに複雑な作業は無理です。放射能汚染水は蒸発するか漏出して事故処理は振り出しに戻る。


再び爆発が起こって、チェルノブイリのような大惨事が起こりうることも想定しながら、今後の対策を考え、備えておくべきなのです。


25年経った今もチェルノブイリの石棺からは放射能が漏れているのです。日本人は楽観し過ぎているようです。動物的カンで危機を察知しなければ大切なものをすべて失ってしまうのです


週刊現代7月16/23号より転載しました。

posted by キキ at 21:10| Comment(0) | 大震災・原発 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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